「何を?」


ふぅ、と一息ついたユナの顔は笑っていなかった。



「…知らないのか」

「だから何をさ」

「赤茶の髪の男の子。その血まみれだったって人だよ」

「…?」


血まみれの。

たぶん意識があって立ってた方の男の子のことだ。

見たことあったら「あれ?」くらいに思うだろうし、多分知らない人。

わからないと首を振ったら、呆れたため息が降ってきた。



「たぶん隣の組のヒロト君でしょ」

「誰それ」

「やっぱり。この学年じゃ有名人よ?」

「へぇ…そうなんだ」


知らなかった。

でもひと学年に何百人といるんだから、その中の一人を知らなくったって何にもおかしくないはずだ。