「みっちゃんが困ってそうだったから来たけど、藤本はともかく、俺はもう戦力にならないかもよ」


三成のことを “みっちゃん” と呼ぶところで、既に仲のよさが伝わってくる。



「そーそ。俺はともかく、山下は寝てばっかだし、最近はろくに喧嘩もしてねぇし、マジで戦力外」

「藤本に言われると腹立つから黙ってて」



冷たく遮られた藤本くんは、拗ねたように口を膨らませた。



「山下にやる気がねぇのは毎度のことだろ。体力はともかく、喧嘩のセンスはあんだから、うまいこと呼び覚ましてくれよ、な?」

「はあ。呼び覚ますってなにそれ……。まあ、テキトーに頑張るけど」



どこまでもやる気のない返事をした山下くんが、ふとこちら視線を寄こしたかと思えば。



「あんたは?」

「えっ?」

「名前なに?」


そういえば、まだ名乗っていなかった。



「相沢、萌葉……です」


改めて男の人を目の前すると、急に体が固くなる。
やっぱりあたしの人見知りは治っていないみたいだ。



「もえは、ちゃん?すんげぇ可愛いね、仲良くしよ〜」


藤本くんが陽気な人でよかったと思う。

初対面の人でも、フレンドリーに接してもらえると、少しはあたしも楽に話ができる。



「こんな感じで、無気力と無鉄砲を具現化みてぇな奴らだけど、昔はちゃんとした不良やってたから」



ちゃんとした不良ってなにそれ、と思うものの、いちいち突っ込むことはせず話に耳を傾ける。



「こう見えて山下は金髪だったし、藤本は緑だったしで……」

「あーハイハイ。その説明は いらんから、早く本題に入ろう。な?」


過去の話をされるのが恥ずかしいのか、藤本くんが焦ったように三成の頭をはたき、あたしに目配せして話を促した。