本多くんと中島くんの思い出が詰まった部屋に、ひとり残される。


ずっと棒立ちしているわけにもいかないからと、椅子を引いて腰をおろした。


うさぎのぬいぐるみをテーブルの上に座らせて、じっと見つめる。



中島くんのお気に入りだったぬいぐるみ。

本多くんがプレゼントしたもの。


長い耳にそっと触れ、それから後ろに手を回したとき。

背中に、ファスナーが付いているのに気づいた。
小物などを中に仕舞うことができる仕組みらしい。


外から見る限りでは、特に何かが入っているような感じはなく。

ファスナーを引いてみたのは興味本位。


ドキリとする。

何も入っていないと思っていたその中に、折り畳まれた紙が入っていた。


少しだけ出してみると、“ 中島るき ”と幼い文字で書かれた名前の隣に “ 65 ” という赤い数字が。

返却されたテスト用紙……?


入っていたのはこの1枚だけ。

別に隠すような点数でもないのに……と口元が緩みかけたとき。



「萌葉! いんのか!?」


突然、カウンターの方から荒々しい声が聞こえて。

あたしの名前を呼ぶその声が、三成のものだったから、状況が読めずその場に固まった。



「三成君、落ち着いて」


市川さんの声も聞こえてきて、中島くんのテスト用紙を、慌てて中に戻そうと折りたたむ。


だけどその時、ふと紙の裏側が見えた。

──────何か、書かれている。



足音が近づいてきて、この部屋にたどり着くまでのほんの一瞬。


そこに書かれた文字を見て、中島くんが隠していたのは、テストの点数じゃないことを知る。