「こっちに来ないで!!!」

海の中だし、歩きにくいから バシャバシャと音を立てていると、 "自分の方に向かってきている" と気づいたのか、彼女は叫んだ。

「何で⁇自殺しようとしている人には近づくのすら、駄目なのか⁇」

彼女は振り返った。

振り返った彼女は、とても驚いている といった表情を浮かべていた。

「やっぱ、分かっちゃう⁇」

さっきまで驚いている、といった表情だったのが 泣きそうな顔に変わっている。

「まぁ、まだ海開きしてないのに 海に入ろうとしてる、って時点で 大体の察しはつくよな。」

俺は彼女の肩を俺の方に寄せた。

「何が君をそんなに苦しませているのか、話くらい聞いてもいいだろ⁇

できれば、足が寒いから 1回 海から離れたいんだがな。」

「……どうして、そんなに私に構うの⁉︎
放っておけばいいじゃない!!!

どうせ、赤の他人なのに……どうして⁉︎」

彼女は俺の手を振り払った。

「うーん……俺は、前に 大切な人を失ってしまったんだ。

未だに忘れられないよ、もう2年経つってのに……それほど、俺にとっては 大きな出来事だったんだ。

それ以来、俺は 目に映った人だけは どうしても救いたい、とか 思うようになったんだ。

傲慢かもしれないがな。」

「嘘でしょ、そんなことを思う人は もっと優しそうな人だと思ってた……好青年とかが 思うようなことだって。

正直に言って、貴方みたいな格好をしている人のことは 信じられない。」