少女の俯いた視線の先に真っ白い大人用のスニカーカーが、立ちふさがっている事に気が付いて、ゆっくりとその視線を直人にうつした。

「よぉ・・・」
「・・・・。」

両手をポケットに突っ込んだ無表情な直人の呼びかけに合わせたような、無反応な彼女と無言の会話を続けていると、見送って出ていた教師が見かねて声をかけて来た。

「あの・・・。　水崎さんのお知り合いですか？」

大学を出たばかりであろうこの教師は、灰谷　美園（24歳）

少女を庇うように小さな両肩に手を掛け僅かに、自分の方に引き寄せた。

「別に・・・。」

少女から、美園に視線を移しながら首から下げさせられた校内パスを彼女の前に突き出した。

「えっ、アッ今日のパソコン授業の講師の方でしたか・・・。」

少しバツの悪そうな表情でパスを直人の胸元に戻すと直人から1歩距離を取り軽く頭を下げた。