予期しない言葉に、山下と信也が不審なあ面持ちで、直人の顔を伺う。

「幸せって、それのどの辺が幸せなわけ……?」

信也が、僅かにカップに残ったコーヒーを口にしながら問いかける。

山下も、思いもよらない直人の返答に、その答を催促するように、眼鏡をかけ直した。

「アイツ、3枚の食パンをすげぇ嬉しそうに抱えて帰ったんだ………。」

先日の公園での出来事か直人の脳裏に甦る。

「一度でも、俺が何かを与えたら、もう公園のごみ箱をあさってでも生きようって思えねぇよな……」

その言葉に信也も公園でごみ箱をあさっていた美結の姿を思い出した。

「………あっ、あの時って、やっぱ食いもん探してたって事かよ……?」

今の時代に、小さな子供が食べる物すら無い生活を山下は想像すら出来ずに、ただメガネの奥で無意識に涙が溢れ出すのを必死に我慢していた。