「ああ……。」

山下の入れた紅茶を、口にしながら話し終わった直人が又、大きなため息を漏らす。

ティーセットを片付けていた山下が、ふと手を止めて直人の顔を伺いながら口を開いた。

「ボスは、その少女の事が可哀想だから、そんなに落ち込まれているのですか?」

淡々とした口調だが、山下が直人の事を心配している事は直人も信也も分かっている。

「可哀想……か……」

直人の頭の中で美結の事を可哀想だと思う気持ちは、当てはまらないのだ。

しばらく、考え込んでいる直人に山下の追加の提案が降って来る。

「そのように気落ちされるのでしたら、お食事にでも連れて行かれればよかったのでは?」

「……アイツの、細やかな幸せを奪えねぇだろ……」