色白でほっそりした体に、その華やかなワンピースがとても似合っていた。
いつも、大変な仕事をして私を育てている母は子供の私から見てもとても綺麗だった。

「じゃあ、行って来るから……」

そう一言を残してパタンと玄関を出て行った。

「行ってらっしゃ……」

いつも、そう言って送り出そうと思うけど、私の声は母には届いてはいなかった……多分。

母が居なくなった後、静まり返った部屋で1人鏡台の上に置かれた100円玉を手に取りギュッと握る。
まだ母の手の温もりが残っているような気がするのだ。

それから5日母は帰って来なかった。

「今日は、帰って来るよね……お母さん……」

最後の100円を昨日使ってしまい、今日の夜には食べ物が無くなってしまう。

「今日は、帰って来るよね………」

祈るように、何度も独り言のように呟いた。