弾みで、美結の握りしめていた、１００円玉が転がり姿を消す。

「あっ、……」

小さな声が漏れるが、店内の騒がしさと、女子高生達の話の熱中度合いで美結の声など、呆気なくかき消された。

呆然としている美結は、商品棚の方に追いやられて、姿さえ見えなくなっている。

直人が、ツカツカと女子高生達に歩みより、彼女達を押し退けて、美結の腕をぐっと引き出した。

「コイツが！並んでるんで…」
「…………。」

女子高生達は、直人を見上げて息を詰めた。

それから、ゆっくり美結に視線を移すと、一人がポツンと声を漏らした。

「うわ、汚い……」

美結の汚れた、顔や手に驚いたのか一歩距離を取った。

「１００円が……」

そんな女子高生の言葉など無かったかのように、美結の心は落として姿を消した１００円玉に向けられている。