学校から美結を乗せた車が、彼女の家だと言う古いアパートの前で停まった。

ハザードランプを点滅させて、道の脇で彼女を下ろした後、アパートの前でポケットから鍵を出し一人黙って部屋に入って行く美結の姿を見送っていた。

閉じた扉から視線を外し運転席のシートにもたれて目を閉じて、自分を落ち着かせるように、ゆっくりと深く息を吸い込む。

「カチャン……」

美結のアパートからもう一度扉の開く音がした。
ハッして、開いた扉の方を見ると、美結の姿があった。

直人の車に気が付き、一瞬足を止めた美結がそそくさと、車とは、反対の方に走り出す。

(はぁ～？何だよソレ……！)

直人も、車を飛び出して美結の後を追いかけた。

「おい、何やってんだよ！」

数メートル走った所で美結の細い腕を捕まえ、問いただしてみる。

「ご、ごはん……」