「水崎美結」

水崎美結、10分も前に聴いた彼女の名前をようやく知る。

「みゆう……俺は、成宮直人……」

言葉がしゃべれる事が確認出来た事で直人の心は僅かに軽くなった。

「家は…?どの辺なんだ?」
「……」

(又、……?) 

もう一度、美結の横顔を横目で確認する。
子供にしては、顔も手もカサついて、どことなく薄汚れた肌に小学生にしては小柄な体格。
改めて見ると、とてもキチンとした生活が送れているようには見えない風貌だった。

「オマエ、年いくつ?」

直人の質問に今度は、少しだけ間をおき小さな声がこぼれる。

「8歳……」

(8歳?って事は2年?)

小学生にも見えがたいのに、2年…。

視線を前に戻して、頭に血が上るのを必死に押さえながら、直人の手はハンドルを強く握りしめていた。