校門を抜けてしばらくの沈黙の後、直人の頭にこの間の夜の公園での事がよみがえった。

チラリと横目で少女を盗み見るが、まるで石のように固まったまま動く気配すらない。

「オマエ、名前は?」
「…………」

予想通り、返事は無い。

(送ってやるって、一体どこに送るんだよ……)

一人大きなため息をつきしばらく車を走らせる。

「……ゆう……」

(……!?)

無言の空間に突然小さな声が直人の耳に届いた。

「はぁ?」

あまりの、小さな声に助手席の少女が何かしゃべったのか、ただの物音なのか分からず思わず、確認するように聞き返した。

少女が僅かに顔を持ち上げて、大きな瞳だけを最大限に直人の方に向けもう一度唇を開いた。