エンジンをかけて、車を出そうとした直人目の前を、数人の男子生徒に追いかけられる少女が横切った。

(又、アイツかよ……)

直人の人差し指がハンドルをトントンと数回叩き、諦めたように車から降り立った。

「おい、オマエら！！」

直人の声に男子生徒と少女が同時に立ち止まって振り返る。

「あっ、社長先生だぁ～車カッコいい！！」

新しい獲物を見付けたように、男子生徒達が車の方に集まってくる。

「やべっ！」

慌てて車に戻り、子供達が到着する前に、ゆっくりと走り出した。

少女の横まで徐行して、窓を開ると少し息のキレた肩を上下させていた。
小さな体に重たそうな古びたランドセルを背負い直して彼女は歩き出そうと、向きをかえる。

「乗れよ、送ってやっから。」

2～3歩進んだ時に又、男子生徒達が彼女目掛けて戻って来る。

その足音にビクッと体を揺らした後、ギュッとランドセルの肩口を握りしめて直人の車の方に早足に歩き出した。

バックミラーで、男子生徒達の事を確認して、急いで助手席の扉を開いてランドセルごと少女を車に引っ張り乗せて、アクセルを踏んだ。