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見渡す限りの人混みと話し声。押し潰されそうになって気分が悪い。
ぐるぐると回る景色に、思わず口をおさえてしまう。
もう無理。ここにいたくない。早く逃げ出したい。
「琴……っ!」
ぼんやりと、遠くから遥の声が聞こえる。それと同時にホッと息をつく。
良かった。ここには遥もいる。私ひとりだけじゃないんだ。
「こっちだよ……っ!ほら、手」
伸ばされる手に、手のひらを重ねる。冷たい遥の手からもぬくもりが伝わってくる。
助かったんだ、私。繋がった手をギュッと握り返して、またゆっくりと歩き始める。
これも遥のおかげ。遥がいなきゃ、きっと人混みに押し潰されて大変なことになっていたはず。
私達は今、入学式のために高校に来ている。
でも、今日からこの環境で過ごしていくと思うと気分が重い。