「こーと、準備できた?」
お母さんと話していたはずの遥が、いつの間にかもう靴を履いていた。
いつもそう。私が闇にのまれそうになったとき、連れ戻してくれるのはいつだって遥だった。
なんだかんだ言っても私も遥に頼ってるし、やっぱり好きな気持ちは変わらない。
「うん。ごめん、今行くよ」
ほら、ちゃんと笑顔でいなきゃ。私がきちんとしなきゃ。
そうじゃないと遥も不安定になって、元気に学校へ通えない。
私のせいで遥を傷つけることになるのだけは、絶対に嫌だから……。
何があっても私が遥を守るんだ。それが私の役目。
だから……今日も心の裏側に見え隠れする闇を照らすように、私は思いきりドアを開けた。
外の景色は、家の中とは真逆。別の世界に来たんじゃないか、と思うほど、辺りは輝いていた。