桜庭くんと話してから、いつもより少し遅く教室に入ったけど、やっぱり何も変わらなかった。
初めて会ったばかりの人とあんなに長く会話したんだなぁ、と不思議な気持ちでいっぱいなままだった。
でもそれは、私自身が変われたわけじゃない。桜庭くんがたまたま話しかけてくれただけ。
そう、私がただ遥の “ 姉 ” だった。それだけの理由なんだから。
そんな朝のできごとを思い返しながらも、急ぎ足で病院へと足を運ぶ。
そうだ、急がなきゃ。遥が待ってるんだから。
お母さんは仕事なんだから。遥には私しかいないんだから。
私が、頑張らなきゃ─────。
きっと、こんな醜い心をもってることでさえ、遥に悟られてはいけないんだと思う。
純粋に姉兄として遥に接してる自信はない。単なる自己都合がきっと大半を占めているはず。
でもね、これだけは確かだよ。私は、遥のことが好き。この事実だけは。