お母さんには、ドア越しに「お母さん、ご飯できてますから」と抑揚のない声で言うと。
「わかってるわ」とひと言。それだけ返してお母さんはリビングへ向かう。
そう、私なんていなかったかのように、振り向きもせず向かうの。
その行動に毎日胸を痛めてるなんて言えないまま、今日も私は心を檻に閉じ込める。
遥だけ。本当に、私には遥だけしかいないんだよ。
友達もできない。お母さんにはいない存在のように扱われる私。
そんな私に、居場所なんてないんだ。
「はぁ……」
自分の部屋に戻り、ため息をつきながら制服に着替える。
この制服と3年も一緒に……ううん、3年もまた孤独な学校生活を送らなければいけないなんて。
もともと、『同じ中学だった人がいないところに通いたい』と言った私に対して。
『それなら、一緒にここに行こうよ』って遥が誘ってくれたのがきっかけでこの学校に入学した。