遥が明るいのは、心の奥にある本当の気持ちを隠すため。
遥に友達が多いのは、ひとりが嫌いだから。私と違って前を向いて生きようとしてるから。
遥がいつも笑っているのは、弱い自分を見せないため。みんなに心配をかけないため。
そして何より─────みんなと同じように見てほしいから。体が弱いからって気をつかわれたくないから。
そんな遥を尊敬してるし、羨ましくも思う。だって私にはそんなことできないもの。
行動してみなきゃわからない、なんてよく言うけど、私にはわかる。
確かに、嬉しい気持ちは共有し合える友達が必要だと思う。でも、悲しい感情は誰かと共有する必要ない。
嬉しさは2倍、悲しさは半分に。なんて、そんなのただの綺麗事じゃない。
辛いことまで共有してたら、私のせいでまた誰かが傷つくことになる。また、疫病神だって言われる。
そんな思い、もうしたくないから。
「琴、また帰りね」
手を振る遥と分かれ、重い足を動かしながら教室のドアの前に立つ。
また人の中に紛れるんだと思うと気分が悪い。でも、避けられない道だから。
息を吸い込んでドアを開ける瞬間、聞こえたのは誰かの笑い声だった。