反対の腕を掴まれ、気持ち悪さに鳥肌が立つ。


「ほんの少しでいいんだ。俺の話を真面目に聞いてほしい」

「なによ!都合のいい女がいなくなった?!わたしほど使える馬鹿な女、そうそういないもんね!てか離せ!」

「違う!いいから黙って聞けよ!」

「やっ…」


両腕をぎゅっと男の力で掴んだ崇憲は、そのまま車にわたしを押さえ付けた。


「お前のお陰で俺がどれだけ最低な男かわかったんだ。お前のお陰でまともな感覚になれたんだ。前の俺とは違う。それだけはわかってくれよ」

「こ、こんなことしてる時点でまともな感覚じゃないと思うんだけど。なんか別人みたいだよ。どうしちゃったの?」


鬼気迫る勢いの崇憲に、さすがに怖くなる。

たしかに前の崇憲と違う。ここまでしつこいというか、執念深い男じゃなかった。むしろ来るもの拒まず去るもの追わずだったのに。

なんでわたしにここまで執着するの?!


「……実を言うと、お前と別れてから何度か女と遊んだ。でもどうしてもお前を忘れられなかったんだ。どうしても俺にはお前がいい。お前じゃなきゃ、華乃じゃなきゃだめなんだ」


なんだよ、しっかり遊んでるんじゃないの。

って、別にどうでもいいけどさ。