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「向こうへ着いたら分刻みのスケジュールになるわよ」

「どこの芸能人だよ。それとも総理大臣か?」


専用車の中、空港へ向かいながら麻友ちゃんが何度もスケジュールのチェックをする。


「例える相手を間違えているわよ」

「わかってっから」


……う、会話をするのもきつい。目が尋常じゃないくらい重い。

目が覚めたのは一瞬だったな。


「できるだけ早く終われるようにしたから、プライベートはないと思いなさい」

「はいは…」


そうだ、華乃に連絡しとかないと。


あの様子じゃ変に心配しそうだからな。


スーツのポケットから携帯を取り出す。


──でも今華乃の声を聞いたらまずいな。行きたくなくなる。


思わず手が止まってしまう。