華乃から着信があってから何時間経ってんだよ。もしかしてとっくに産まれてんじゃ……。


何度も繰り返されるコール音。エレベーターが一階に着いても、その音が止むことはなかった。


逸る気持ちを抑え込み外に出ると、目の前に俺の専用車が停まり、運転手が待ち構えていた。


さすが麻友ちゃん。最高に気が利くな。


「華乃の病院まで急いでくれ」

「承っております」


車は可能な限りのスピードで病院へと急ぐ。

焦ったってどうしようもないのに、無駄に心は乱れる。


『何かあったら連絡するから、できる限り携帯チェックするようにしててね』


臨月になってから毎日のように言われていたのに、今日は特に忙しくて携帯を見る余裕がなかった。


いや、そんなの言い訳だ。携帯をチェックするくらい、いくらでもできたはずだ。

そうしたら、今より少しでも早く駆けつけられたのに。

何やってんだよ俺。


馬鹿みたく自分に苛立ち、頭をかきむしる。


その上こんな時に渋滞にはまり、病院に着くのが普段の倍の時間がかかった。

どんだけタイミングが悪ぃんだよ。