「き、緊張する」

「は?緊張する相手じゃねぇだろ」

「するわ!会長なんでしょ?!」

「俺の祖父ちゃんだっつーの」


今二人で向かっているのは、龍成のお祖父さんが宿泊しているホテル。


お祖父さんと会うのは今回が初。お祖父さんは海外在住で、本当にたまにしか日本に帰ってこないらしい。

結婚式はお葬式が重なったみたいで祝電のみの出席だった。


わたしが妊娠したと聞いたお祖父さんは、時間の合間を縫って帰ってきてくれた。

それは嬉しい。嬉しいのだけど…。


あの神田グループの会長。そして龍成のお祖父さんと言うことは、龍成のお父さんのお父さん。

龍成のお父さんがあんなに威厳のある人だから、そのお父さんもまた然り……。


う、想像しただけで恐縮しちゃう。


「や、やっぱりわたし帰…」

「着いた」

「ぎゃ!」


こ、これまた超高級ホテル……!

入ることすらわたしにはおこがましい!


「早く降りろよ」

「ね、ねぇ、わたしそんなおめかししてないんだけど、ドレスコード引っかかるんじゃ」