わたしには結婚してからの夢があった。


それは産婦人科で「神田華乃」と呼ばれること。


夢というか憧れかな?


龍成の奥さんになれたんだと実感できる瞬間。

龍成と家族だと思える瞬間。


ずっと待ちわびていたの。


──今日、その夢が実現する。


ドキドキする胸を抑え、産婦人科のドアの前に立つ。


さぁ、行くわよ!


「……って、なんであんたが付いて来るの」

「え?なんでって、俺の問題でもあるんだから当たり前だろうが」


なぜかわたしの後に引っ付いている龍成。

問題って、なんだそれ。


「なにが問題じゃ。ていうか来なくていいから」

「は?それこそなんでだよ!」

「あんたが産婦人科なんていたら場違いもいいとこだもの!」


浮くとか考えないのかこいつは!