龍成が手にしていたグラスの中身は、ものの見事に安奈と呼ばれるギャルの顔面に命中していた。


「華乃、帰るぞ。これなら家で飲んでた方が良かったわ」

「え、」


わたしの手を取り、龍成は足早にその場を去る。


無言のままパーキングに着き、すぐに車に乗り込んだ。


「……酒かける前に『嫁と飲んでるのに邪魔すんな』って言うつもりが、順番間違えたわ」


さっきの間違えたはそういう意味か……。


「……気にしないであの子達と飲んできたら?飲み屋にでもホテルにでも行ってくればいいじゃん」


龍成のしたことは正しいことではないけれど、嬉しかったのは事実。


なのに消えない嫉妬の塊。

わたしの知らない龍成を知っている彼女たちに、完全に嫉妬していた。


龍成、ごめんね。どこまでも馬鹿で。


「……なら行ってくるわ」

「えっ」


龍成は車のドアノブに手をかけた。