頭は上げたものの床に座りっぱなしの五十嵐を前に、俺もソファーに座れずにいた。


「いいからちゃんと座れよ」

「……失礼します」


俺の言葉に、申し訳なさそうに五十嵐はソファーに座る。

俺も座り、ようやくまともに顔を合わせた。


「んで?どういう心境の変化?軽く別人だろ」


豹変どころの話じゃねぇ。

これ、マジで五十嵐本人か?


「……神田さんを怒らせるつもりはなかったんです」

「絶対嘘だろ!怒らせようとしてる風にしか思えねぇよ!」


相変わらずふざけた奴だな!ありえねぇだろ!


「ちっ、違うんです!俺はただ……神田さんに憧れていて…」

「……は?」


なんだって?耳を疑う言語が聞こえたぞ。


「俺、仕事はやればできるのに、女関係だけはうまくいかなくて……。始めは向こうも感じ良さそうにしてるのに、本気で付き合おうとするとすぐ逃げられるんです。それで週刊誌でよく見かけていた神田さんを見習おうと思って……」