「これから行くからそのまま待ってろよ」

『今から?ど…』


麻友ちゃんともまともに会話する余裕がない。電話を切り携帯をしまった。

エレベーターが到着し、外に出てタクシーを拾い乗り込む。


「花京院一丁目の神田まで」


一つの会話もないまま神田家に到着。玄関に入るとすぐさま麻友ちゃんがやって来る。


「龍成!さっきの電話、一体何なの?突然どうしたの?それもこんな時間に……あら。華乃さん、こんばんは」

「こんばんは。ご無沙汰しております」

「結婚式以来ね」

「親父はどこだ」


んな悠長に話してる場合じゃねぇんだよ。


「リビングよ。今帰ってきたところなの」


最後まで聞く前にリビングに向かう。ドアを開けると、親父はソファーに腰を下ろしているところだった。


「親父」


剣幕な俺を見た親父は、普段のお固い表情の中でも、少しだけ驚いているようだった。