華乃の声が震えている。目が潤んでいる。


名刺も指輪も見たのか。……もしかして、ずっと不安にでも思っていたのか?


「あほか。『仕事でキャバクラに行くから』なんて、敢えて言うか?帰ってきて『キャバクラに行ってきた』なんて言うか?仕事で仕方なく行っただけなのに、ただでさえ無駄に妬くお前相手に、んなこと言ったって喧嘩になるだけじゃねぇか」

「──でも、隠してる方が怪しいじゃない」

「隠してるつもりなんてねぇよ。言う必要がなかったから言わなかったんだろ」


なんて言っておいて、実際は隠してたんだけどな。こんな風に言い合いになりたくなかったんだよ。


「そ、それでも、言われないと隠されてる気持ちになるよ」

「仕事で行ったんだ。好きで行ったわけじゃない。つーか俺が金払ってまで女と飲みたいと思うわけねぇだろ。金なんて出さなくたって、いくらでも女は寄ってくるんだから」

「……名刺を持ち帰る必要はあるんですか」

「名刺は帰る前に捨てるのを忘れてただけだ。もうねぇよ」

「じゃあ指輪は?」


──。


思わず言葉を無くしてしまった。この問いかけには、軽く答えられなかった。