あいつに向かい、華乃は手を振り見送る。


つーかもう桜庭じゃねぇっつーの。


エレベーターの扉が閉まり、俺は部屋に入る。

自分がこれほど大人気ない行動をとるとは、それこそ思いもしなかった。


どうしてイラつくんだろう。どうして何かにあたりたいと思ってしまうんだろう。

理由なんて始めからわかっているのに、ガキな自分を認めたくないのだろうか。


少しして華乃が部屋に入ってくる。ネクタイを緩め俺はソファーに座った。


無言でイライラ全開の俺。察したのか、華乃もすぐには口を開こうとはしなかった。


「……お帰り。早かったね」

「普通だろ」


いつもよりきつめの口調になってしまう。ガキな自分を罵りたい。それなのに心は追いつかず、感情的になる。


「ていうかなんで電話にでないのよ」

「あ?仕事中だったからに決まってんだろ」

「終わったんなら折り返してくれてもいいんじゃないの」

「折り返しただろうが」

「は?!」

「折り返して出なかったのはお前だろ」