何かから解放されたような気分だ。

何かじゃなく五十嵐だよな。あいつから解放されたんだ。もうあいつのお守りはしなくていい。


心や体までもが軽くなった気分だ。……って、そうも言ってられねぇな。


親父に失敗だと報告しなきゃならねぇ。これもまた面倒な話だが、五十嵐に付き合っているよりはマシだ。


親父に電話をしようと、上着のポケットから携帯を取り出す。


……ん?不在着信……華乃から?


すぐに折り返しの電話をするも、一向に出る気配がない。コール音の途中で電話を切り、次は親父にかける。


………親父も出ねぇのかよ。


ふっとため息をつき、携帯をしまった。


明日でいいわ。今日は疲れた。


窓の外に流れるネオンの輝きが、やけにぼやけて見える。

他人にこれほど気を使うってことに慣れていないせいか、五十嵐がくそすぎるせいか、精神的な疲れが尋常じゃない。


世のサラリーマンを尊敬するわ。ストレス社会の一部を勉強できたと思おう。さすが俺。腐ってもいい男。