『どうも、五十嵐です。今大丈夫ですか?』

「五十嵐さん、お世話になっております。もちろん大丈夫です。ご用件は…」

『この間の店、今日行きませんか?ていうか行きましょう』


──はあ?強制かよ。


「…えっと……今日、ですか?」

『はい。遅くても八時には会社を出れると思うんで、九時に店の前で待ち合わせましょう。マナちゃんに電話入れておくので』


く、九時?開店と同時に店に入るって、どんだけ気合い入れてんだよ。しかもシラフでキャバクラって、結構きついぞ。

本気ではまってんだな、こいつ。……親父の手前、断れねぇよな。


華乃の機嫌もとれてないってのに、どこまでも厄介な奴だ。


「……わかりました。今夜九時に先日のお店で」

『よろしくお願いします。では失礼します』

「はい、失礼します」


電話を切り、しばらく画面を見つめた後、机の上に携帯を放る。


……おかしいな、俺が接待する立場じゃなかったか?俺が誘われるって、逆じゃねぇか?