「あ、そ」


あんなんでも実力はしっかりあるんだよな。厄介な奴だよ。


「なんだ、苦戦しているのか?」

「苦戦っつーか、あいつ面倒くせぇんだよ」

「苦戦しているんじゃないか」

「そういうんじゃなくて、……いいわ。何でもねぇ」

「……」


口を閉ざし資料に目を戻した。親父に言うのも面倒くせぇ。マジである意味尊敬するわ、五十嵐和樹。


……もう一つの悩みの種。


五十嵐とキャバクラに行った日から、確実に態度がおかしい華乃。

当たり障りない会話は表面上愛想良くするのに、少しでもじゃれつこうとするといきなり拒絶しやがる。


──あいつ、絶対見たよな。名刺と指輪。


あの日、実家に帰ってると思ってたから捨てるの忘れてたんだよな。五十嵐の相手に疲れてすっかり忘れてた。

指輪はシャワーの後で気づいて寝る前につけた。名刺は次の日即行で外で捨てた。

けど、見たに違いないあの態度。