「新くんはあのお店でずっと働いてたの?」


エレベーターが上昇していく怖さを紛らわす為に、会話が途切れないようにしなきゃ。

新くんにしがみつくわけにはいかないんだから。


両手をぎゅっと握りしめた。


「大学行きながらあそこでバイトしてたんだけど、卒業したら社員にならないかって言われてさ。悩んだけど好きな仕事だし、いつか自分の店もちたいって思ってたから契約したんだ。一応今副店長なんだよ」

「えっそうなの?!すごいじゃん!」

「雇われだけどな」

「いやいや、すごいよ!それに自分の店もちたいとか、ちゃんと夢があって!わたしも少し境遇が似てるから余計にそう思うよ!」

「似てるって?」

「わたしも学生の頃からバイトしてたカフェで、今社員になって働いてるんだ。でも新くんみたいな夢とかないし、言ってしまえば社員になるのが夢みたいなもんだったから、ちゃんとした夢があって仕事してるなんて尊敬するよ」

「それじゃ桜庭さんはもう夢が叶ってんだな」

「え……」


夢が叶ってる?


「社員になりたいって夢、叶ってるじゃん。俺にはそっちの方がすごいと思うよ」


……新くん……。

本当に素敵な人だなぁ。