「え?ゲロ臭いかと思って」

「ぶは。別に気にしないよ。ごめんね、痴漢に遭って泣くとか」

「マジ許せない!どんなやつか全然わかんないの?!見つけたらサンドバッグにしてやるのに!!」


本気で怒った顔をするひかりに心が癒される。


「残念ながら。ありがとうね」

「や、わたしがゲロったせいだよね。本当にごめん」

「なんでひかりのせいなのよ。関係ないから」

「タクシー拾って帰ろう。送るよ」

「あ…新くん、ごめんね。せっかくの機会なのにこんなことになっちゃって」


この場に居合わせたばかりに、とんだとばっちりだよね。久しぶりの再会だったのに。


「それは気にしなくていいよ。またうちの店に飲みに来てくれれば」


優しい笑顔、優しい言葉。

さすが人気者だっただけあるわ。新くんには申し訳ないけど、いてくれて本当に助かった。痴漢に遭ったあと女二人じゃ心細いもん。


「うん!ひかりと絶対行くから!次は飲もうね!」