「代わりに褒美をやろう。うまくいけばもう一度新婚旅行に行かせてやる」

「そういう問題じゃ」

「華乃さんも仕事の付き合いだと理解してくれるだろう。くれぐれも俺が噛んでいることは言うな」

「なんで」

「俺は先に帰る。良い店を探しておけ」


俺の訴えを聞きたくないとでも言うように、親父は立ち上がる。


「あほか!待てよ!つーかヘッドハンティングのやり方なんて知らねぇし!」

「お前の好きなようにやればいい。あまり時間と手間をかけるな。相手の情報は後ほどリストにしておく」

「おい!お……」


パタンとドアの閉まる音と共に、親父は一瞬にしていなくなった。


「……マジでふざけんなよくそ親父」


──だから麻友ちゃん抜きだったのか。


つーか結婚してから気づいたけど親父、華乃のこと意外と結構可愛がってんだよな。

普段の親父なら有無を言わさず、こんな料亭で改まって話すこともなかった。

俺じゃなく華乃に悪いと思ってんだろ。