「─早く入籍したい」

「──」

「新婚旅行から帰ってから入籍の予定だったけど、行けなくなったから入籍しちゃいたい」


─まさか、そうくるとは。


「……別にいいけど、そんな急ぐもんじゃねぇだろ」


婚姻届はすでに全て記入済みで、あとは出すだけの状態だった。

新婚旅行から戻って落ち着いたら出そうって言ってたんだよな。


「早く『神田華乃』になりたいんだよ」

「……」


──。


「やっと、ずっと想い焦がれていた結婚ができた。それでもやっぱり入籍しないと、『神田華乃』にならないと安心できない」


その口調は不安げで、表情まで暗くなっている。


「安心って?」


今の名前が嫌だからっていう理由ではないのか。一体何を不安に思ってるんだよ。