「他にいねぇだろ」

「なんでそんなに色々作れるの?しかもそれなりに美味しいし」

「それなりってなんだよ」

「ね、なんで?」

「なんでもくそもねぇよ。天性の才能だ」

「……少しは謙虚って言葉覚えたら」


呆れる華乃。


ヒモだった時期、女が仕事で家にいない時に腹が減って、自分で作らざるを得ない状況だったから覚えた、とは言えねぇだろ。


「んなことよりお前こそベッドで寝ろよ」

「……うん」


返事をしておきながら動かない。なんだよ、動くのが面倒なのか?


「また抱っこして欲しいのか?それなら…」


不意になにか体に重みを感じると思ったら、華乃が俺にもたれていた。


「……今はベッドで寝るよりこうしていたい」


目を閉じて、ギリギリ聞き取れるくらいの声で言った華乃に、俺の心臓は大きな衝撃を受ける。