龍成に無理やり腕を引かれ車に連れられる。


「俺の先輩の店に行くから、俺が運転する」


久しぶりに自分の車の助手席に乗り、違和感を感じつつも少し嬉しいと思ってしまう自分がいる。

龍成がわたしの車を運転してる。

そんな小さなことに喜んでるわたしって、誰に言われるまでもなくあほです。自覚しています。


…またため息がこぼれる。

少し赤くなった顔が龍成にばれないように、そっぽを向き頬杖をついて、窓の外の景色を見るふりをした。


う゛ー、ちゃんとできるかな?わたし…。龍成の婚約者として会うんだよね?


婚約者として、婚約者として……。その前にこいつの勝手さがイラつく。
 

そうだよ。なにときめいてんの、わたし。


……昨日のこと、何とも思ってないんだな。やっぱり、龍成の中でわたしの存在はそこまで大きくないんだろうな。


……ちくしょう。一人で悶々と飲んだくれてしまおうか。軽くやけ酒じゃ。


車がパーキングに停まり、少し歩いてお店に入る。


「わ、おしゃれなお店。龍成にしては意外」


今まで龍成にこんな落ち着いた飲み屋、連れていってもらったことないわ。