龍成にしがみつき、外を見ないように目を閉じる。


「なんか久しぶりだな、この感じ」


懐かしむように龍成は言うけど、わたしにはそんな余裕などない。


15階に着くまでの間、一言も発することができなかった。

いや、部屋に着くまでずっとその調子だった。


「──うわ、いきなり懐かしいわ」


部屋に入りドアが閉まったところで、ようやく安心できた。


少し大きく息を吐き、中に入る。


「大丈夫か?」

「…うん。──わっ」


不意に体が宙に浮き、心臓が飛び跳ねそうになる。


龍成の顔が近くにあり、抱き上げられたんだと気づく。


「お、降ろしてよ。大丈夫だって…」

「いくらでも俺に甘えていいからな」


わたしの言葉など聞きもせず、優しく微笑み寝室に向かう龍成。


……もう充分甘えちゃってるっての。


わたしって本当に馬鹿だ。こんな時なのに男らしいと思ってしまう。


龍成の男らしさに、その頼りがいのある腕の強さに、わたしは心から安心して体を預けることができた。