「歩けるか?」

「大丈夫だって」


そう言いつつも、しっかり龍成に支えてもらっている。

案外こういう時、頼りになるのかも。


そうして支えてもらいながらマンションに入る。


ここに住んでいたのはそこまで前のことではないのに、頭がぼやけていても懐かしく感じてしまう。


短い期間だったけど、思い出の濃さは最上級。

嫌なことの方が多かったけど、今となってはどれも愛しく思える。龍成との思い出が、たくさんたくさん詰まってる。


──わ、このエレベーターだ。わたしの恐怖そのもの。


「目、閉じてていいぞ。離さないから」

「…うん」


熱くてだるいのに、しっかりとある恐怖。


思い出に浸っていられない自分が憎い。