「新郎様、会場にいらした時にスタッフが新郎控え室に案内をしようとしたのですが、新婦様が綺麗になっていくのを一番近くで見ていたいと仰ったらしいですよ。花嫁姿を一番先に見る男は自分だって豪語されたとか」

「…」


…そ、そうだったのか…。


「わたしには新婦様が『絶対に泣くので無様な顔にならないようにお願いします』と。ずっとわたしの手を監視するように見つめていらしたのでプレッシャーでしたよ」

「わ、す、すみません…」


龍成ってば…。


「いえ、素敵な旦那様で羨ましいです」


…人のことを言えないけど、やっぱり龍成も素直じゃないよ。


人のことを、龍成のことを言えないけど…。


──だめだめ。今日は素直にならなくちゃ。龍成が来たら謝ろう。車の中でのことも。

せっかくの結婚式なんだから。一生に一度の結婚式なんだから。