「どした?なんかあったのか?」
心配そうにわたしを見る翔くん。
ずっとあなたに会いたかった。
ずっとあなたの隣に居たかった。
別れてもあなたを忘れた日なんてなかったんだよ。
ずっとずっと…
「好きだよ、翔くん…」
ずっと好きだった。
わたしだってずっと好きだった。
「え、待って、何言ってんの…
莉子…彼氏は…?」
驚いていた。
「別れたの…
翔くんが忘れられなくて…
翔くんが好きで…
わたし翔くん以上に好きになれる人なんていないよ…
ずっとずっと一緒にいて、もう、わたしから離れないで。」
翔くんに会わなかったら
わたしは何もかも思い出にして
蒼くんと一緒にいるはずだった。
でもね、翔くんに会ってわかったの。
思い出になんてできなかった。
翔くんを忘れるなんてできなかった。
蒼くんを傷つけても
誰かに何を言われても
翔くんと一緒にいたい。
これがわたしが出した答え。
好きで別れたんだから
もう一度会って気持ちが高ぶってるだけなんじゃないかって思われるかもしれない。
違うの、そんなんじゃないの。
ただ…翔くんが好き。
こんなに好きになれる人これから先いない。
「莉子…っ…」
翔くんは力強くわたしを抱きしめた。
この温もりをわたしはずっと忘れられなかった。
温かくて優しい…
「好きだ、もう俺絶対お前を離さないから。」
その言葉信じるからね?
どちらからともなく唇を合わせたわたしたち。
好きだという気持ちをもう一度確かめ合った瞬間だった。
—————3年後
「あー!やべ!遅刻する!!莉子なんで起こしてくれなかったんだよ!」
翔くんは慌ただしくスーツを着てネクタイを締める。
「アラーム鳴らなかったの〜!!ごめん〜!」
リビングをバタバタと走り回るわたしと翔くん。
今朝、昨日の夜セットしたはずのケータイのアラームがセットできてなかったらしく鳴らなかった。
「じゃあ行ってくるから!」
翔くんが玄関の扉を開ける。
外の光が部屋に射し込む。
「いってらっしゃい!」
「あ!忘れ物した!」
翔くんは一度閉めかけたドアを開けてわたしに軽いキスをした。
そしていってくるからと言って家を出た。
忘れ物って…もう…
わたしはベランダに出て車に乗り込む翔くんを見る。
「仕事頑張ってね!」
わたしは翔くんに手を振る。
その手の薬指には結婚指輪がキラリと光っている。
あの日、わたしたちはもう一度付き合うことになった。
そして半年前、ついに結婚した。
部屋のリビングには結婚式の写真と結婚する前の写真と…
あのツーショットの写真が飾られている。
たくさん遠回りしたね、わたしたち。
——「もしかして俺の隣の席の子?
俺、片岡翔!よろしくな!」
小学六年生のとき、初めて翔くんに出会ったね。
そしてあなたにはじめて恋をした。
中学に上がったとき、あなたは何も言わずに引っ越してしまった。
初めて失恋を経験した。
——「え…?もしかして…莉子…?」
そして高校三年生の時、偶然本屋さんで再会した。
奇跡…だったね。
あの時会えて本当に良かった。
——「莉子、好きだよ。俺と付き合ってくれる?」
幸せな日々の始まりだった。
どんな些細なことでも嬉しくって…
はじめて1つになった時、こんなに温かくて幸せな気持ちになったのが初めてで
この幸せがずっとずっと続くと信じてた。
——「別れてほしいんだ…俺と…」
ある日突然別れを告げられた時、胸が苦しくて張り裂けそうで…
頭が真っ白になった。
大好きな人と別れる…こんなに辛いことなんだと知りました。
一生恋なんてできないと思いました。
これから先会えない…だから
忘れるために自分なりに努力した。
思い出の品も全部捨てて写真も…
唯一卒業式の写真は捨てれなかったけど。
成人式のときわたしに手紙を書いてたなんて知らなくて
忘れようとしていた気持ちを呼び起こされた。
あの日、女の人と歩いてたの見たってクラスの男子が言ってて彼女ができたのかなと思った。
あとから翔くんに聞いたら妹の沙耶ちゃんだったんだって。
苦しくて辛い恋のあとに
わたしは蒼くんという素敵な人に出会った。
わたしの何もかもを受け入れて
一番でもなくていいからゆっくり俺のことを好きになってくれたらと言ってくれた優しい人。
その優しさに助けられて
支えられて、一緒にずっといると思ってた。
だけどなんの縁かわからないけど
運命なのかもしれないけど
また翔くんに出会った。
思い出にしたはずなのにやっぱり会ったら思い出してしまった。
でもわたしは蒼くんと一緒にいると決めた。
一緒にいると…決めたのに
別れた理由を聞いたとき、翔くんからもう一度思いを告げられたとき
わたしの心は揺らいだ。
でもわたしは支えてくれた蒼くんを裏切れなくて自分の気持ちに嘘をついて蒼くんと一緒にいようとしたけど
やっぱり無理で、翔くんが好きという気持ちに蓋はできなかった。
蒼くんを傷つけてまでも翔くんの元へ戻りたかった。
わたし、後悔なんかしてないよ。
今すごくすごく幸せなんだ。
翔くんに出会って楽しくて嬉しい思いを知った。
でもね、その分苦しくて切ない思いたくさんした。
時には出会わなければよかったと思ったときもあった。
こんなに苦しいのなら好きにならなければよかったって。
でもね、翔くんに感謝してるんだ。
翔くんのおかげで友達のありがたみ、家族のありがたみを知った。
たくさんのこと教えてもらったよ。
出会えてよかった。たくさん遠回りしたけど
わたしすごく幸せだよ。