あの歌声が聞こえてきた日から二週間。

ー3月1日ー

おれの大嫌いな日が来てしまった。
「卒業生、入場。」
式が始まった。
体育館の中央に敷かれたレッドカーペットを、卒業生たちが歩く。
拍手で手が痛くなってきた頃…
「あ…。」
卒業生の中に特徴的な髪型を見つけた。
直らないのかな、あの寝癖。
おれの隣を通り過ぎる時、彼は他の人に気付かれないようにピースを決めてきた。ご丁寧にウインク付きで。
「バカ…。」
思いきり顔をしかめて小さな声で言うと、彼はとても楽しそうに笑った。