ガキでも 身にしみれば 誰だってわかるわよ!!!
「 一人がそうなら どうせ皆そうなのよ!!」
「 じゃあ なんで 俺についてきたんだよ!!!」
「 それは!!… それは … 」
それは …
慎一くんの目が …
「 俺がそういう奴には見えなかったからじゃねぇのか 。だから来たんだろ 」
そうなのかな
そうじゃない気がする
そう確信は してなかった
だけど 、優しい目だったから
「 … 知らないわよ」
「 … 悪かったよ 。お前が家が嫌いで飛び出したのも わかったから 、悪かった 。」
違うの 、慎一くんは 悪くないの
私が悪いの 。
私が ムキになったから
… やだ 、泣きそう 。子供っぽい 。
瞳に 溜まった 涙が 零れ落ちそうに なった時 、慎一くんは 私を抱き締めてくれた 。そして ひたすら 私の頭を撫でてくれた
まるで
小さな子供をなだめるみたいに 。
なんでかな
さっきまでとは違う
慎一くんには
子供に見られたくない
大人として
ガキじゃなくて
女として見てほしい
… そう思える 相手が 、慎一くんなら …
「 … ねえ 。」
「 ん? 」
「 お願い 、あたしを抱いて 。」
勢いで 言ったわけじゃない
本気で心から
初めては 慎一くんが いいと思ったから 。
慎一くんは 戸惑って 誤魔化そうと したけど 、私はそれを許さない 。
理由を 聞かれて 、全部説明した 。
あの男 に 体を 触られていること 、あの男 は 義理の父親 だと言うこと 。それを知った 実の母からの 嫉妬故の暴力 。何も知らな 幼い父親違いの弟が妬ましく 憎い事 。
それを聞いた上で 慎一くんは なんで今 、自分なのかって 尋ねてきた 。素直に 、どうせ このままじゃ あの男に 奪われる 初めて なら 、慎一くんに 奪われたい 。そう思ったから 。そう答えた 。
少しの沈黙の後
慎一くんは ただ一言
" わかったよ "
そう言って 、私をベッド へ 優しく連れて行った 。
不思議な感覚 の夜で 、ずっと ふわふわしていた 。
その ふわふわの せいで 、朝早く に目が覚めてしまった 。
隣には 慎一くんがいて 。
同じ ベッドに 私の他に 温もりが あるのは久しぶりで 、なんだか嬉しかった 。
その 慎一くん の 寝顔を見て 思った 。
この人も 独りなのかもしれない
私と同じ
帰る家もなくて
ただ1人 孤独なんじゃないかと 、
もしそうなら
私が傍にいたいとも思った 。
いてあげたい 。
じゃなくて
いたい 。
自然と ほころぶ口元を 抑えて 、散らかった 慎一くんの 部屋を 静かに 片付け始めた 。まるで 彼女みたいに 。
しばらくすると 部屋の片隅に 束ねてある 雑誌が目について 、捨てればいいのに 、そう思って 手に取った 。
瞬間
見るんじゃなかった
本気でそう思った 。
手に取った雑誌は 、流行の服装を 着こなして 慣れたようにポーズを取る 1人の男の人 。
箕田 慎一 ( 19 )
慎一くんだった 。
19歳 って事は 、今から 三年前 。
今は モデルを 辞めていたとしても 、いつだって 戻れるんだろう 。だって
振り返って 慎一くんの 寝顔を見る 。
こんなに 、整った顔してるんだもん 、すぐに この 華やかな世界に もどって 、生きていけるんだ 。
私とは違う
全然違う 。
この人は 独りなんかじゃないんだ 、
そっか
そっか 。
揺られる 電車の窓から見た景色 は 、昨日 の 土砂降り のせいで 出来た 小さな 湖が 点々 としていた 。
その 湖 を 、世間では ただの " 水溜り " って言うんだ 。
昨日私は 雨になって 消えて無くなりたい
そう言ったけど
雨になっても 消えて無くなったりしない 。
ああして 弾きあった 仲間同士 集まって 土に帰るのを 待つだけ 。
それを 慎一くん と したかったけど 、世の中は 上手くいかないように出来てる 。
だからって 彼を 忘れるつもりもない 。
ずっと忘れない 。
その気持ちを込めた 手紙を 、少し片付いた君の部屋の テーブル に 置いておきました 。
今頃 読んでくれてるかな 、
勝手に いなくなって 怒ってるかな 、
それとも 納得してるかな 。
読んだ時の 君の顔が 見てみたいな 。
私の名前 莉佳子 っていうんだよ 。
1度 でいいから 声に出して呼んでもらえば よかったな 。
それがたったひとつの後悔 。
今日も 私は この 降り立った 街で
昨日と同じ場所で 、
昨日と同じ家で 、
昨日と同じ事を して 過ごします 。
だけど
昨日とは違う 、軽やかな 足取りで 、今日の1歩を 踏み出します 。
私は 頑張ります 。
慎一も 頑張って 、
今
君が 私の名前を 呼んでくれた気がした 。