「あ、のさ…明日、ひま?」
そう聞かれ少し考える。
明日…って、土曜日…だよね。
お母さんと出かける用事もないし…。
他にすることもない。
「うん。ひまだよ?」
笑顔を向けると、俊は安心したかのような緊張したかのような顔をした。
なんだろ…何かあるのかな?
「もしよかったら…明日、俺の家来ない?」
…なぁーんだ、そんなことか。
緊張しきった顔で何言うのかと思ったよ。
「いいよ!!」
「そうだよね…無理だよね…って、いいの!?」
「え、うん。別にいいけど…」
少し大げさな反応をする俊を不思議に思う。
だって、怜と光くんも来るんでしょ?
今までもずっとそうだし。
「本当にいいの!?
俺の家だよ!?」
「しつこいなぁ、いいってば!」
さっきから変な俊。
何をそんなに慌ててるんだろう。
「じゃ、じゃあ、明日の1時に俺の家、来てくれる?」
「はーい!」
「愛ちゃん、もし行きたくなくなったら遠慮なく言ってね!?」
「もう!大丈夫だってば!
今日の俊なんか変だよ!」
「いや…だって…そんなあっさりとOKしてもらえると思ってなかったから…」
…?
よくわかんないけど私ならそんなもんだと思うけど…。
「楽しみっ!
俊の家に行くの夏休みぶりだからね!」
今度は何をして遊ぶんだろう?
この前はDVD見たりしたしね。
そんなことを考えていたらあっという間に私の家に着いた。
「じゃあ、土曜日楽しみにしてるね!」
俊にそう言い、手を振って家の中に入った。
だから私は知らなかった。
「まじかよ…我慢できるかな…」
俊が少し顔を赤くしてそんなことを呟いていたなんて。
翌日。
ドキドキ…。
俊の家の前をさっきから何度もウロウロとしている。
俊の家には何度か来ているよ?
でも、やっぱり慣れないな…。
私の目の前には大きくて立派な一軒家が。
3階建ての白い壁が目立つおしゃれなこの家が俊の家だ。
初めて来た時は、びっくりしたなぁ。
だって、予想以上に大きいんだもん。
それに、まだ慣れてないんだよね。
ドキドキとする心臓を落ち着かせようと何度か深呼吸をする。
…よし!!
私は勇気を出してインターホンを押す。
ピンポーン…。
インターホンの音が家の中から聞こえてから数秒後、ドタバタと人が走るような音が聞こえる。
ガチャ。
ドアが開く音と共に現れたのは俊。
「い、いらっしゃい!
中に入って」
緊張気味な俊を見て少しホッとする。
緊張してるのは私だけじゃないんだ…よかった。
「おじゃまします…」
安心しながら家の中に入ると、広くて綺麗な玄関が目に入る。
…相変わらず大きいなぁ…。
私の家の玄関の3倍はあるんじゃないかって思うほど大きな玄関。
少しキョロキョロと家を見回して、ふと疑問に思った。
あれ…そういえば今まで何回か家に遊びに来ているのに俊のご両親は見たことがない。
挨拶しなきゃと少し緊張していたけど、今日はいないのかな?
「俊のご両親は今日いないの?」
「あ、うん。
2人とも仕事が忙しくて滅多に帰ってこないんだ」
そうなんだ…。
でも、この家を見ると少し納得できるかも。
こんな大きな家を持つくらいだからお金持ちなんだろうなとは思っていた。
どんな人なんだろう…。
俊のご両親って。
俊に似てすごい美形なのかな…。
「俊のご両親ってどんな人?」
私は俊の部屋のソファに俊と並んで座り、質問する。
俊は「ん〜」と考えこんだ後、口を開いた。
「厳しくてよく怒る人。でも、誰よりも俺のことを考えてくれてすごく優しい人なんだ。2人とも」
少し照れくさそうに、でも嬉しそうに笑いながらそう言う俊。
そんな俊の様子から、俊のご両親は素敵な人なんだろうなと想像する。
俊のご両親に挨拶するのは今日は無理そうだけど、いつか挨拶しなきゃ。
心の中でそう決意した時、大事なことを思い出した。
あっ!!
そういえば、光くんと怜も来るんだよね?
すっかり忘れてたよ!
俊も何も言わないし。
いくらなんでも遅くない?
「ねぇ俊。
光くんと怜まだ?」
私が何気なく聞くと、種はポカーンとした顔になる。
え、何その顔?
私、なんか変なこと言った?
「…なんで光と荒木?」
「…へ?2人も来るんでしょ?」
なんでってなんで?
私が意味わからないと首を傾げると、
俊は何かに気づいたのか、「だからあんなにあっさりOKしたのか…」と意味のわからないことを呟いて深いため息をついた。
…え?
どういう意味…?
「あのさ…愛ちゃん」
「は、はいっ」
少し緊張気味な俊を見てると私まで緊張してきた。
「今日、光と荒木は来ないよ」
「…え?」
え…?待って。
理解できない。
今、『怜と光くんは来ない』って言った…よね?
なんで…?
もしかして急用でも出来ちゃったのかな?
「なんで来ないの?
急用でも出来ちゃったとか?
でも、あの2人ならきっと連絡してくるよね?」
私が少し慌て気味にそう言うと、俊は少し大袈裟にため息をついた。
な、なに?
ため息なんてついちゃって…。
私、変なこと言った?
少し心配に思いながらじっと俊を見つめる。
「あのさ、俺、あの2人が来るなんて言ってないよ」
少し呆れたような顔をした俊の口からはそんな言葉が出てきて、私の頭は一瞬フリーズする。