入って来た女は俺の隣の隣に座った。
恐らくここがいつもの席ってやつだろう。

視線を感じて隣を見た。
なにかが俺の脳内に入ってきたような感覚に陥った。
夢…でも見ているのか…?
華奢な体に少し茶色のロングヘアー
まだ未成年にみえる。

煙草…吸ってんだな。
俺と同じの、

「あの…」

「えっ…あっ、ん?」

「俳優の湘くんですよね…すいませんプライベートなのに突然」

「いや、うん、そうだよ。全然大丈夫だから」

俺らしくない。プライベートで話しかけられるのは好きじゃない。おかしい。何かがおかしい。俺はどうしちゃったんだよ…


「あのっ、生で見てもお優しい顔してるんですね」

その女はにこにこしながら言った

「優しい笑顔だ…」

「えっ?」

やべっ、心の声が漏れていた

「んっ、えっとー…」

「ファン慣れしているんですね、湘くんもとても優しい顔をされるんですね。ほら、画面の中の湘くんはちょっぴりSでいじわるだったりするからさ」

「そうだね、そうゆう役の方がどちらかと言うと多いかな。よく見てくれてるんだね。ありがとう」

「いえいえ!」

それだけ会話すると彼女はひとりの世界にはいっていった。
やばい。かわいい。

「私、お邪魔したくないので先に帰りますね、マスター!ご馳走さまでした」

そう言って帰ってしまう

あっ…名前…聞いてなかったな。
マスターがきなちゃんって読んでいた
珍しい名前だな、本名かな。