「おはようございます湘さんはいります!」

あぁ、憂鬱な仕事の始まり
局の外に出ればうるさい女がキャーキャー騒いでる。まるで俺はかごの中の鳥。

「なにしてんだろ23にもなって、俺は」

自問自答の毎日

俺は小椋湘(こぐらしょう)。
いわゆる人気俳優
画面の中にいる俺は嘘をついている
やりたくないことをやって
ただ楽な方に流れてったらこの仕事にたどり着いた。本当のゆとり世代ってやつ。

「湘、今日もよかった」

そう言ってきたのは
女優の楠木渚(くすきなぎさ)。

「あぁ、ありがと。なぎささんもさすがだね、俺はまだまだだよ」

「やめてよ、湘。彼女に敬語なんて」

「やめろ、聞こえたらどーすんだ」

「ごめんなさい、今夜会えるの楽しみにしてるから、じゃあお疲れさまでした」

俺には3つ年下の彼女がいる
つってもここ2.3ヶ月前から。
出会いはPRで参加したイベントであっちが一目惚れしたらしい。
特に女にも困ってなかったけど顔も悪くないし売れっ子だからOKした。
ただそれだけで他には何も理由はない。




「もしもし、渚 … あぁ、ごめん。今日は打ち合わせが入って無理になった。うん、ごめんな。また今度。じゃあ、おやすみ」

俺はいつもこーだ、ほんと自分まで嫌になる。

ーカランカランー

「いらっしゃい」

「久しぶりに来てみたよマスター」

「水割りと梅ね、そこ、座って」

ここはいつもくる居酒屋【じゅげむ】
雰囲気も味も好きで通ってる

「いらっしゃい」

「マスター!また来ちゃった」

「毎日またって聞いてるな、きなちゃん。いつもの席空いてるよ。生ね!」

「うん!マスターありがとっ」

こんな居酒屋に女1人か。

…っつ//