「ただいま~。」

彼女の家は、普通の二階建ての一軒家だった。

寂れた田舎町ながら、隣近所も普通にあった。

だだっ広い野っ原にポツンと一軒だけだったらどうしようかと思っていたので、とても安心した。

「あがって。」

後ろに付いて玄関を抜けると、リビングのようだった。

「おかえり。……彼氏か?」

体格の良い男がソファーに座っていて、声を掛けてきた。

「違うよ。後輩連れてくって言ったでしょう。」

「後輩、ね。男だとは思わんかった。」

「佐東君だよ。田舎、見たいって言うから。あ、これ、兄の貴史。

お母さんは出掛けているの?」

「買い物だろ。
あ、俺出掛けるから留守番ヨロシク。」

「いってらっしゃーい。」

彼女のお兄さんは、すれ違い様に俺の肩をたたいて出ていった。

一言も発する事が出来なかった俺への、挨拶のつもりなんだろうか。

「座ってて。あ、トイレはそのドア開けて真っ直ぐの突き当たりの戸だから。
荷物とか、上着、その辺にまとめて置いてね。

何か飲み物あるかなぁ。
小腹も空いたし、何かないかなあ。」

そう言いながら、キッチンでごそごそする。
実家だとは言え、自由な人だ。