身体の節々が痛い。

苦しい。

意識が朦朧としている中、沢山の人の声が聞こえてきて
｢あぁ、起きなきゃ」って思って

目を開くとお医者さんらしきおじさんが驚いた顔で私を見てる。

女の人も男の人も私を見てる。

女の人は泣き叫んで

「ひめの、ひめの」って誰かを呼んでいる。

男の人は安心したかのように私をみて微笑んだ。


「自分の名前分かりますか？」

とお医者さんが聞いてきた。


何を言っているのだろう…自分の名前が分からない人なんている訳ないのに…

私は心の中でくすくすっと笑った。


「私の名前は…なま、えは…」


あれ？私の名前は…なんだっけ??


どうしても思い出せない。


なんで？どうして！？








思い出せない…。。




「わか、りません…。思い出せないです」


何度思いだそうとしてもどうしても思い出せない。おかしい。



お医者さん達は急に慌てだして、女の人と男の人を連れてどっかに行った。






10分位たった後、また戻ってきた。



お医者さんはベットの横にある椅子に座って

「落ち着いて聞いて下さい。」

私をじっと見て言った。


「あなたの名前は、石崎 姫乃さん。16歳
あちらにいるのがあなたのお母さんとお父さんですよ。分かるかな？」


私は男の人と女の人をそれぞれ見た、ピンとこない。

「分からないです。」


お医者さんはふぅと息を吐いて

「あなたは、今日から七日前の5月8日に交 通事故に遭ってね、そのショックで君は記憶喪失になってしまったんだよ。」


私はその事実が受け止めきれなくて、時間が止まったみたいに固まった。

ボーッとしてると後ろからお母さんとお父さんっていう人に後ろからぎゅって抱きしめられた。


「記憶が無くても姫乃はママ達の大切な娘 なんだからね」

「遠慮せず頼りなさい」

って言ってくれた。心の中がなんかジワジワって温かくなって目から涙が出てきた。