「何よ……こんな茶番が見たかったんじゃないのよ」


「え? 月さんどうしたんですか? 」


しまった。思っていたことが口に出てしまったわ。いつもは思うこともないようにと気を付けていたのに。


「まぁこの際記憶を消せばいいわ。こんなこと」


「月ちゃん? なんか怖いですよ」


『どうして怒っちゃうのかしら。茶番を見るのって楽しいわよ。馬鹿馬鹿しくって』


「うるさい‼ それより二人とも連れてくわよ。お望みなら」


さっきの声の正体。私は知ってる。でもこの二人には聞こえない。


「二人? 何でなの? 私一人にして、私はあのとき死にかけた。だからやよいちゃんと違う施設になったなら私は消えてもいい」


『ほらほら、要望よ。顔が涙でぐちゃぐちゃ。汚いわね。早くつれていく約束をして帰りましょうよ』


うるさいうるさい。自分だけ救われなかったからって私に付きまとわないで‼ なにもしないくせに。


「二人の心のなかは一緒よ。教えてあげるわ」


二人の心の奥の声。人間の本当の闇。知らないなら今ここで教えてあげる。人間誰だってそう。本当の闇は、本当の願いは。いいわ。その願い、叶えてあげる。


「二人とも、自分がいなくなればいいって思ってるわね、でも奥ではこいつさえいなければ、なんの悔いもなく生きていける。だから消えてってね」


『あなたはほんとに不気味に笑うのね。ああたまに起こるこんな状況。黙ってなんていられないわ』


「いいわ。特別にあなた二人の願いを叶えてあげるわ。明日を楽しみにしていることね」


一度に二人も生け贄を手に入れることができるなんて。今日は最高ね。