「うんまっ!俺、祥ちゃんのコーヒーだけは何故か飲めるんだよなあ」

「秀真用に砂糖多めで甘くしてるからだろ」

とお兄ちゃんがマグカップを片手に笑う。


「それより明里、それどうしたんだ?」

「あ、これは秀真に貰ったの。可愛いでしょ」

「可愛いけどアレはどうしたんだよ?前に悠から貰った――…」

「失くしちゃったから」


お兄ちゃんが最後まで言う前に、言葉を遮ってそう言う。


「失くしたなんて聞いたら、悠怒るんじゃね?」

「悠はそれぐらいで怒らないって。あっ、こんなゆっくりしてる暇ない!愁真、急ぐよ!お兄ちゃん、美味しかったご馳走様!」


コーヒーを一気飲みし、慌てて靴を履くと家を飛び出した。